IV.保衛局の構造

 保衛局の組織全体を大きく2つに分けると、中央指揮機構である人民軍保衛局と人民軍の各梯隊に設置されている保衛局傘下の組織に分けることができる。まず、中央機構の組織を見てみる。

 人民軍保衛局の部署は、平壌に位置している。保衛局長、政治部長等の指揮部が勤務している保衛局基本庁舎は、平壌大城区域龍北洞に位置しており、平壌外国語学院と塀を隔てて接している。そして、その他の部署成員が勤務する数カ所の独立庁舎は、平壌市内の他の場所に位置している。

 人民軍保衛局の構造は、図1にあるように大きく4部分に分けられている。第1に、保衛局の基本任務を遂行する13の部署があり、第2に、一種の支援機能を遂行する幹部部があり、第3に、保衛局長の名目上の指揮下にあるが同時に人民軍総政治局長の直接的な統制を受けて保衛局成員の党生活を統制する政治部があり、第4に保衛局直属部隊がある。

1.参謀部部署

 人民軍保衛局の基本業務を遂行する部署は、正式名称ではないが、通称的に「参謀部部署」と見られる。これらの部署を統制する参謀部が別に存在することはなく、人民軍保衛局長の直接統制を受ける。4名の副局長がこれらの部署を分けて担当しているが細部担当部署は知られていない。

 これら参謀部署は、人民軍隊内の各級部隊単位に組織されており、保衛機関に対して行政的に指揮、掌握、統制しており、重大な反党、反国家的事件を取り扱う。これらの参謀部部署を詳細に見てみる。
 
bullet第1部:保衛局全般の計画作成、総和事業、軍事訓練組織、行政事業全般を掌握、統制する機能を遂行する。一種の参謀部署の役割を遂行し、正式名称は、「1部」又は「組織計画部」か、通称「参謀部」として見られる。しかし、外部に出た文書には、必ず「第1部」と表記する。これは、他の部署も同様に対外的には、部署の番号のみ表記する。

 第1部はまた、各軍団に配置されている軍団保衛部を直接指揮、統制する。すなわち、人民軍保衛局の命令、指示等を下達し、その執行状況の報告を受ける。各軍団に発生した全ての事件の一次的報告を接受して総合し、必要な場合、予審部等の他の部署に資料を引き継ぐ。

bullet第2部:捜査部。間諜、反党、反革命分子を始めとする思想犯、政治犯の犯罪行為に対する捜査を担当する。

bullet第3部:予審部。犯罪者に対する審問を担当する。

bullet第4部:監察部。脱営、殺人、国家及び軍需物資の窃取並びに横領等と関連した事件を取り扱う。

bullet第5部:事件総合部。捜査部、予審部、監察部、尾行部等に提起された事件を総合的に分析、評価する。

bullet第6部:尾行部。犯罪者に対して秘密裏に監視、追跡、潜伏等の方法により調査する。

bullet第7部:技術部。少将級以上の将領の事務室及び自宅に設置された電話内容を盗聴し、必要に応じて別途の盗聴装置を設置することも行う。外国軍事代表団団長が乗る乗用車内に盗聴録音装置を設置する。外国軍事代表団成員が宿泊する招待所、ホテルの部屋に対する盗聴を行う。

bullet第8部、第9部、第10部:人民武力部所属の工場を担当する工場担当部、人民武力部内の特殊機関を担当する特殊部、住民登録を担当する住民登録部に分けられているが、部署別任務は、正確には把握されていない。

bullet第11部:対外関係部署。外国人を相手にする人民軍内機関の軍官、将領を監視、視察する。外国に派遣される北朝鮮軍軍事人員を監視、視察する。外国に派遣された各級武官、教官、教育生、外貨稼ぎの一群等が事業対象である。北朝鮮に常駐する外国軍人(武官部成員を含む)に対する監視と尾行を行う。第11部の承認ない北朝鮮軍軍人と人民武力部所属の民間人の交際には、外貨稼ぎ一群も含まれる。国境検閲哨所を指揮、統制する。これにより、軍人又は軍機関において事業を行う民間人が新義州、南陽を始めとする国境都市において外国人及び中国朝鮮僑胞と会う必要性が提起される場合、これらはまず民間機関である国家安全保衛部2局15課において事前に「面談合意書」の承認を受け、該当地域に到着したならば、この文書をその地域の保衛部に提出する。

 これと共に、人民軍保衛局11部所属国境検閲哨所に赴き登録する。面談又は接触が終われば、討議した内容、談話内容を要約整理して国境検閲哨所に提出しなければならない。(このとき、民間機関であるその地域の保衛部には、事後報告しない。)このように、軍人及び軍に属する民間人の場合には、2重の統制を受ける。

bullet教育課:教育課は、保衛軍官を教育、養成する事業を担当する。保衛軍官の教育又は保衛大学の教育に関連した計画樹立、プログラム開発、現況把握、対策樹立等の業務を遂行する。(保衛軍官、保衛一群と言う言葉は、保衛事業を行う軍官を総括的に呼ぶ言葉であり、保衛指導員、責任保衛指導員等は、幹部事業、すなわち、人事事業を取り扱うことにより呼ばれる職責の名前である。)

bullet資料室:資料室は、外部から搬入された書籍又は資料、そして保衛局の内部部署から生産された資料を保管し、閲覧する。

2.幹部部

 幹部部は、連隊以上の部隊の保衛軍官を選抜、任命、配置する事業を担当する。(北朝鮮においては、このような任務を「調動」と言う。)幹部部は、人民軍保衛局長の直接統制下にあると同時に朝鮮人民軍幹部部の統制も受ける。

3.政治部

 政治部は、人民軍保衛局自体内にある参謀部部署、幹部部部署、保衛局直属部隊(警備旅団、護衛隊、検閲隊等)に対する党組織の思想生活を掌握、指導する。このとき、注意すべき点は、この人民軍保衛局内の政治部が人民軍内の一線軍団の保衛部事業は、指揮しないと言う点である。どこまでかは、人民軍保衛局自体のみを統制する。一線軍団の保衛部はその軍団内に設置されている政治機関の統制を受ける。もう1つ注意すべき点は、この政治部がたとえ人民軍保衛局内に存在しなくても、人民軍総政治局長の直接的な指揮と統制を受けるという点である。

 これは、非常に複雑な統制機構である。要点を取りまとめれば、人民軍総政治局は、人民軍内の全ての機関と部隊に独自的な組織を配置、各機関と部隊の党組織生活を掌握、指導するということで、人民軍保衛局もまた例外ではないということである。

4.保衛局直属部隊

 保衛局が直接管轄する直属部隊は、次の通りである。金正日の警護任務を担当する護衛隊(300余名の軍官)、手紙等の軍人の手紙に対する検閲を担当する検閲隊(1個大隊規模の女性軍人)、国境地域での検問検索と軍人の行動を掌握、統制する国境検閲哨所(新義州、図們を始めとする国境地域に60個余り)、戒護任務(犯罪者を逮捕、拘留する任務)を担当する部隊(1個大隊規模)、保衛局庁舎の警備を担当する警備中隊、人民軍保衛軍官を専門的に養成する教育機関である保衛大学が存在する。

 そして、最近の情報によれば、金正日の指示により国家安全保衛部第5総局(警備総局)傘下にあった3個国境警備旅団が保衛局に配属されたというが、現在のところ最終的に確認されていない。これらの国境警備旅団の基本任務は、国境地域における反国家体制活動、騒擾等を迅速に鎮圧することと国境及び海岸警備である。そして、人民軍保衛局が直接統制する部隊ではないが、各軍団の保衛部が統制する保衛小隊が存在する。

○指揮部階級構造

 人民軍保衛局には、保衛局長1名、副局長4名がおり、幹部部には、部長、副部長2名がおり、政治部には、政治部長、副部長2名がいる。副局長は、各行政部署を分けて、担当するか細部事項は知られていない。

 保衛局長は大将、政治部長、副局長は中将、幹部部長、政治部副部長、各行政部署(1部から11部まで)部長は少将である。元来は、5部事件総合部長と11部対外関係部長のみが少将編成であったが、1993年10月に全ての部長が少将編成となった。特異な点は、政治部長の場合、階級は中将であるが、事実上保衛局長と同級の待遇を受けているという点である。

 この他、直属部隊を見れば、保衛大学学長は中将、保衛大学政治部長、副学長(4名)、学部長は少将、国境警備旅団旅団長も少将である。

5.北朝鮮軍各級梯隊の保衛機関

 人民軍隊の各級梯隊は、ほとんど例外なく保衛部又は保衛軍官は設置されている。一般的に師団級以上の梯隊に数名の保衛軍官が1つの部署(軍団保衛部、師団保衛部等)を形成しており、大隊級以下の梯隊には、保衛軍官1名乃至3名が個別的に任務を遂行している。

 このようにして、朝鮮人民軍総参謀部から始まり、下は人民軍大隊まで保衛局の監視体制が入り込んでおり、軍事分界線内に配置された民警中隊の場合には、中隊単位にも関わらず中隊保衛軍官及び小隊保衛軍官が配置されている。

 軍団保衛部長の階級は、中将又は少将である。前方部隊の場合、中将であり、後方部隊の場合、少将である。

 人民軍隊内の保衛機関体系は、図2の通りである。

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最終更新日:2003/05/01

 

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